新人の育成の手法として定番なのはOJTです。先輩社員と同じプロジェクトに入って一緒に仕事することで短期間で即戦力となる人材育成が図れることが期待されています。
IT業界の仕事は机上の技術的な知識を身につけるだけでは現場では役に立たないことは事実なので、座学ではなく実践の場で学ぶと言うアプローチは間違っていません。
しかし、実際のところ、OJTを行っても期待したような成果が得られていないことが多いのではないでしょうか?
その要因としては以下のようなことが考えられます。
指導者(メンター)が忙しすぎて十分な指導ができない
OJTが効果を発揮するには、新人を現場に入れるだけでは不十分で定期的な先輩社員からのフィードバックが欠かせません。フィードバックを受けて仕事をして次のフィードバックを受けるサイクルを短い期間で多く回せば回すほど教育の効果は高いです。
しかし、実際のところ、指導者が多忙過ぎて、中々、フィードバックをする時間が取れないのが実情ではないかと思います。
適切なフィードバックができない場合、最悪、放置状態になってしまい、新人のモチベーション低下、早期の離職を招きかねません。
指導が属人的になる
指導を担当する方は、豊富な経験のある優秀な方が多いでしょう。しかし、その経験・知識が指導対象の新人に対して適切がどうかは分かりません。指導者が優秀であればあるほど、新人に対して高いレベルを期待しすぎてしまう危険性があります。
また、大変な努力をして今のレベルに到達した指導者は、自分だって努力してここまでなれたんだからやれるはずと過剰な努力を求めてしがちです。
しかし、残念ながら「努力を続けられる」こともある種の才能・能力であって、同じようなことはできないケースが多いです。
そのような個々人のスキルレベル、パーソナリティを見極めて指導するには、心理学の知見や科学的にエビデンスのある能力アップの方法をとる必要があります。
実務のおいて優秀な指導者であって、そのようなことを踏まえて新人にあった指導をするのは指導者の方にとって相当な負担になると思われます。
指導者の負担
これは私も経験がありますが、本業で成果を出すことを求められつつ、新人の育成も同時にやることは非常に難しいです。
例えば、納期が迫っている、プロジェクトが厳しい状況にあった場合、やはり、プロジェクトの仕事を優先せざるを得ないでしょう。新人に経験を積むために任せたいと思った仕事でもベテランメンバーに任せざるを得ないこともあると思います。私もこの相反するジレンマをどのように解消するか随分悩みました。
これは社内の人事評価システムの課題でもあります。
本業と同じく新人育成についても正当な評価基準があれば、いいですが、形式的にはあったとしても新人育成についての評価システムは不十分なことが多いと思われます。これでは、育成の仕事が指導者にとっては社内ボランティアのような状況になってしまい、指導者の良心に任せる状況になってしまいます。